令和7年10月23日(木)にオンラインにて三県合同研修会・情報交換会及び「第112回支援者のつどい」を合同開催しました。話題となった概要を広く皆様にお伝えします。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
共催:山形県地域福祉推進課/復興ボランティア支援センターやまがた
<参加者>順不同
中間支援団体 1団体
酒田市社会福祉協議会
山形市社会福祉協議会
大玉村社会福祉協議会
福島県社会福祉協議会
米沢市防災危機管理課
山形県被災者・避難者支援室
福島県避難者支援課
福島県障がい福祉課
新潟県防災局防災企画課
新潟県精神保健福祉士協会
ふくしま心のケアセンター
<プログラム>
13:30 開会
13:35~14:15【研修会】
講話:「移住と帰還の選択」に関する心のケア
講師:ふくしま心のケアセンター 所長 前田 正治氏
14:15~14:35 【情報交換会】
情報交換:「各県の避難者・支援者の状況について」(代表者による発表)
・福島県社会福祉協議会 総括生活支援員 伊藤 俊雄氏
・山形県地域福祉課 主事 岸 唯楓氏
・新潟県防災企画課 主事 八代 司氏
14:50~15:55 【第112回支援者のつどい・グループワーク】
15:55~16:20 【グループワーク発表・共有】
- 開会
【あいさつ】 山形県健康福祉部 地域福祉課長 廣谷 勝子氏
・東日本大震災から14年が経ち、山形県内は約1,100名、新潟県内は約1,700名、福島県内は約4,600名の方が避難生活を送られている。
・今年6月に復興庁より示された第二期復興創生期間以降における東日本大震災からの復興基本方針について、心のケアを中長期的に取り組むべき課題として位置づけられた。
・避難者が抱える課題が個別化多様化する中、円滑に支援を進めるために三県での情報共有が重要である。
- 講話
テーマ:『「移住と帰還の選択」に関する心のケア』
~ 避難者の抱えるトラウマを考える ~
講 師:ふくしま心のケアセンター 所長 前田 正治氏
<震災当初について>
1)南相馬市の状況
・震災当初、浜通りや中通りの各地で放射能検査が行われた。
・南相馬市の小高区では、地震での建物被害が殆どなく、多くの住民がすぐ帰れると思っていたが、実際には帰還準備区域になり帰還できたのは3、4年後になった。その間、曖昧な状況に多くの住民がさらされてしまった。
・南相馬市では子どもたちの願いや疑問が寄せられ、親の悩みを反映していた。
2)避難についての分断
・自然災害ではリスクを巡る分断というのは殆どみられず、福島の場合はリスクを巡り人々の考えが大きく分かれた。
・家族間、家族同士での軋轢が住民同士の分断を生んでしまった。
・父親は仕事で福島に残り、母親は子どもを連れて県外避難という形での分断。
<避難先での問題>
- コミュニティの分断
・避難住民と避難先コミュニティの間でも問題が起きた。
・避難先コミュニティに参加する事が難しく、将来どうなるか分からないとう心配からマージナリティー(※)の問題が生まれた。
※社会的なつながりやコミュニティ生活から切り離されている状態
・突然、マジョリティからマイノリティになってしまった結果、避難者はアイデンティティを失った。
- いわき市での問題
・いわき市に大量の避難者と関東からの復興従事者が入り、10人に1人が避難者という状況となり、大量の追加消費が起こった。
・異なる意見や価値観などで住民との軋轢が生じ、保健所から「避難者が来て迷惑」との声もあった。(ゴミ出し・不動産価格の上昇・高校の偏差値・町の雰囲気の変化・パチンコ通いなど)
・いわき市も震災の影響を受けており、自分達も被災者ということで避難者を支援すればするほど悪感情が高まり、支援者は板挟みになった。
- 支援の状況
・原発事故によって役場避難が生じ、福島県内に多くの出張所が出来た。
・心のケアセンターでは、6~8名で避難者といわき市民の二つのコミュニティの支援をおこなった。
・東日本大震災の現状を踏まえ、原発事故の国際的なガイドライン(WHO)では避難先の住民のサポートも重要視している。
<メンタルヘルスについて>
- いじめの実態
・福島県県民健康調査「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果、2割の親がいじめに遭っている事を心配しており、実際、福島県外に避難したお子さんがいじめに遭っていることが多かった。
- いじめによる影響・メンタルヘルスの悪化
・避難先を転々とし、いじめに遭い不登校引きこもりになってしまった事例では、自分を認めてもらえないという気持ちがあり、アイデンティティを失い自分の生き方が壊れてしまった。
・若い世代が多く、何度も引っ越しをした中で様々な偏見を受けた結果、メンタルの悪化を招いた。
・偏見を受けると、自分がそういうマージナリティーの人間だと思い込んでしまう。
3)メンタルヘルスの悪化・原因
・うつ状態で、「被爆した自分が周囲からどう見られているか」「東電の賠償を受けている事を非難されている」という不安要因を持つ方が一定数いる。
・通常自然災害で起きるうつ状態は喪失体験が主だが、福島の場合は放射能に対する遺伝の問題、放射能に関する懸念が一番の原因とみられる。
・広島の原爆被爆者の調査では、被爆体験より差別体験の方がメンタルヘルスに大きく影響を与えた結果が出ている。
・避難区域外からの避難者の方がトラウマを強く感じている。
<サポートについて>
1)支援体制
・避難者は共感されることが少なく、福島の事を語らないため、トラウマを受けた後のケア、サポート体制によって擁護が変わってくる。
・被災12市町村に大量の移住者が入ってきている。(場合によっては8,9割。)
・被災コミュニティの復興支援と移住者の支援も含めての支援方針を国に要望している。(避難者支援と移住者支援)
・心のケアセンターでは、コミュニティ全体(住民全体)の支援と避難者支援とを機能別に分けておこなっている。
2)県外避難者支援
・今後、県外の避難者支援組織の継続が困難となっている現状を踏まえ、県外避難者へのサポートを模索している。
・人員が減少し場所も遠い為、遠隔支援として電話での支援を検討。
・福島県内での訪問支援も行ってきたが、人数も多いため電話支援に置きかえている。
・福島大学による架電支援も一定の効果を上げている。
3)課題
・マンパワーが足りず、住民支援と避難者支援をどこまで出来るか先行きが不透明。
・避難先との連携と支援対象者の絞り込みをどうアプローチしていくかが課題。
・質を上げるために避難地域との連携を強めていく必要がある。
【質疑応答】
Q:架電支援について、どういった研修をされてきたのか。具体例があればお聞きしたい。
A:統計的なトレーニングはしていないが、直接支援する方々はよくケースカンファレンスをしていた。医大では20人近い支援者がおり、勉強会で様々な講習を受講し自殺に関しても取組み、スキルの標準化を行った。電話支援をするスタッフはかなりストレスがかかるので、スタッフに対するケアも大切。基本的には新人や若い人ではなく、ベテランの保健師やソーシャルワーカーが担当している。
- 情報交換
「各県の避難者・支援者の状況について」(代表者による発表)
【福島県】福島県社会福祉協議会 伊藤 俊雄氏
<避難者の状況>
・見守り相談支援対象は19,628世帯 38,424人。
・令和7年度3月末実績として、相談件数は6,462件。コロナ禍以前に比べ相談件数は71.8%減となっている。
・被災者を取り巻く課題として、高齢化、孤独、生活困窮、心身の問題など多様化している。
・交流事業では、コロナ禍以降行動制限もあり参加人数も減少。
・復興公営住宅については、高齢単身化が進み、コミュニティ形成が難しい。
<支援の状況>
・令和7年3月末時点の生活支援相談員数は120人。 21市町村社協に設置。
・令和7年4月時点で、二本松市が終了し20市町村。生活支援相談員は110名、コーディネーターは29名。
・相談支援においては高齢者、障がい者支援の割合が増加している。
・要支援世帯の相談では日常生活が最も多く、次に健康・医療、家族関係の相談がみられ、コロナ禍以前に比べ健康・医療は増加傾向。
・訪問拒否もあり、困窮世帯の状況把握が困難。
・避難元と避難先の連携が重要となっており、避難自治体の枠を超えた広域避難者支援事業を開始。
・地域住民と避難者が安心して生活できるよう繋ぎ支援が重要となっている。
【山形県】山形県地域福祉推進課 岸 唯楓氏
<避難者の状況>
・令和7年5月1日時点の山形県内の避難者数は1,146人。
・令和7年度に実施した避難者アンケート調査結果の「困っていること不安に思っていること」では、「健康についての不安」が最も多く、次いで「生活資金、冬の生活について」の回答があった。
・今後の生活について、「山形県に留まりたい」が65.5%で昨年度より増加した。
・65歳以上の高齢者世帯も増加傾向にある。
・避難者の抱える課題として、令和元年は住まいに関する課題が多かったが、現在は介護や子育て、就労、生活困窮など複合的な課題となり、避難者特有ではなく、一般市民の生活課題となっている。
<支援の状況>
・県内の避難者支援の評価については、8割の方が評価しているとの結果。
・現在7市に生活相談員を配置し、山形市と米沢市に避難者交流センターを設置。
・相談員への依存も見られ、避難者支援事業終了後の避難者世帯の生活支援を検討していく中で、ソフトランディングを意識する必要がある。
【新潟県】新潟県防災局防災企画課 八代 司氏
<避難者の状況>
・令和7年9月末時点での避難者数は1,717名。うち福島県からは約1,700名。
・意向調査で先の見通しが立てられないという方が一定数ある一方、新潟県への移住は4割となっている。
・困りごとの回答も10件未満。おおむね安定した生活を送られている。
<支援の状況>
・新潟県精神保健福祉士協会と新潟県社会福祉士会が福島県より委託を受け、主な支援を行っている。
・県内22市町村に避難されているが、定期的な見守り支援を実施している市町村はかなり少ないのが実態。
・復興庁からの県外避難者事業等の補助金も減少傾向にあり、以前は相談会や交流会を開催していたが、現在は概ね人件費に充てられている。
・市町村独自で予算をつけるところは少なく、支援体制の縮小がみられる。
・震災から14年が経ち、様々なニーズの受け入体制が難しく、避難先と福島県の連携体制の維持が一つの課題。
・当時を知る職員や自治体職員が少なくなり、支援に深く関わっていく新たな人材育成が必要。









